相談事例

島田の方から相続についてのご相談

2022年07月01日

Q:司法書士の先生にお伺いします。認知症の母の代わりに相続手続きをしてもいいですか?(島田)

亡くなった父の相続手続きを始められなくて困っています。相続人は母と私の2人ですが、母は重度の認知症を患っていて、署名や押印どころか日常生活でもヘルパーさんに手伝ってもらわないとこなせない状況です。父が亡くなって約1か月経ちますが、この間に私ひとりでやれたことと言えば、戸籍を調べて相続人調査を行ったことと、遺品整理をして父の相続財産がどのくらいあるか調べた程度です。父の相続財産は、島田郊外に所有する一軒家と預貯金が800万円ほどでした。遺品整理の際に遺言書を探してみましたが、特にそれらしき物はなかったので、母と相続財産の分け方について話し合わなければならないと思います。しかしながら母は先ほどお話したような状況ですので、このような場合の相続手続きはどうしたらいいかわからず困っています。司法書士の先生、ぜひともアドバイスをお願いします。(島田)

A:正当な代理権もなく認知症の方に代わって相続手続きに必要な署名や押印をする等の行為は違法です。

まず、ご理解いただきたいのが、“認知症等により判断能力が不十分とされると、法律行為である遺産分割をすることができない”ということです。とはいえ、相続手続きを進めないと、期限のある手続きの場合は間に合わなくなってしまう可能性があります。しかしながら、ご家族だから大丈夫と、正当な代理権もなく認知症の方に代わって相続手続きに必要な署名や押印をする等を行ってしまうと違法行為とみなされてしまいます。
このような場合は、認知症、知的障害、精神障害などで意思能力が不十分な方を保護するための制度として制定された「成年後見制度」を利用する方法があります。

まず民法で定められた者が家庭裁判所に申立てを行い、成年後見人という代理人を選任してもらいます。その成年後見人が遺産分割を代行し遺産分割を成立させます。家庭裁判所が成年後見人としてふさわしい人物を選任しますが、以下に該当する方は成年後見人とはなれませんのでご注意ください。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
  • 破産者
  • 本人に対して訴訟をした又はしている人、その配偶者、その直系血族
  • 行方の知れない者

なお、成年後見人には親族に限らず、専門家が選任される場合や複数名選任される場合もあります。

ただし、注意していただきたいことがあります。一度成年後見人が選任されると、遺産分割協議後も法定後見制度の利用が継続します。つまり、今回の相続のみならずお母様がご存命のうちは後見人への報酬が発生することになりますので、本当に必要かどうかをよくご検討いただいた上で成年後見制度を利用しましょう。

 

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